保健師のなかでも、もっとも従事している保健師が多い「行政保健師」。保健師といえば、この行政保健師を思い浮かべる方も多いことでしょう。そこで今回は、行政保健師の仕事ややりがいについてご紹介します。
■行政保健師はどこで働いているの?
行政保健師とは、都道府県や市区町村などの職員(公務員)として保健所や保健センターにて、保健行政に従事する保健師のことをいいます。
厚生労働省の平成28年(2016年)衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、2016年末時点の保健師数は51,280人、そのうち市区町村で働いているのは28,509人(保健師のうち55.6%)、都道府県が1,375人で2.7%、保健所が7,829人で15.3%となっています。
都道府県や指定都市などにある保健所で働く保健師は、公衆衛生の専門家として難病や結核、精神障害者への相談・支援を行ったり、市町村保健師との連携し地域全体の健康問題の把握・調査を行ったりと、地域システムの構築など広域的な視点で業務を行っています。
一方、主に市町村に置かれる保健センターで働く保健師は、同じく公衆衛生に携わる立場から、幅広い年齢に渡る、地域住民の福祉や健康の相談や支援を行うことを主として働いています。いずれも行政保健師になるには、公務員試験に合格し採用される必要があります。
■仕事内容は?
ここでは、行政保健師の主な仕事内容を、働く場所別に見ていきましょう。
保健所での仕事
・感染症や難病、結核、精神障害者への相談や支援
・地域全体の健康問題の把握や調査
・地域ケアシステムの構築
・自治体の健康課題に関わる施策の運営や管理
保健センターでの仕事
・地域住民に対する保健・福祉の総合的な相談や支援
・乳幼児健診、子育て支援
・生活習慣病予防教室の計画や実施
・高齢者の生きがいづくりや介護予防教室の計画や実施
・市民向けのさまざまな健康づくり事業
このように、保健所の仕事を、保健センターでの仕事とくらべると、より広域的で専門性の高い業務が主となっています。そして、保健センターではより地域住民に近い存在で、健康づくりに関するサービスを提供することが中心になっているようです。
いずれにしても、行政保健師は公衆衛生のプロとして幅広い知識と経験が必要となり、行政保健師がカバーする仕事の範囲は非常に多岐に渡ります。
■行政保健師のやりがいや求められるものは?
行政保健師のやりがいとしては、対象住民のライフステージ全般に幅広く関われることなどがあげられます。乳幼児から高齢者までその地域に住むすべての住民が対象となるため、幅広い知識と経験を積むことができ、地域の健康課題に取り組めることも魅力です。
病院看護師とは異なり、対象者が多岐に渡るため、行政保健師に求められるものもさまざま。対象者の個々の問題から、地域の問題へつなげる視点を持てるのか、健康課題を事前に予防できるシステムを構築できるのか、組織と連携してプロジェクトをまとめて推進することができるのかなど、健康問題を考えながらも広い視点で物事をマネジメントしていく力が求められています。
■おわりに
都道府県や市区町村で働く行政保健師は、地域保健行政を担う重要な役割を担っています。今後、少子高齢化がより加速し、社会構造が変化していくなかでは、より、医療や看護の知識を生かしながら、地域で活躍できる人材が、求められてくることとなるはずです。