保健師のなかのお仕事のひとつ「産業保健師」。企業において社員の健康管理が主な仕事ですが、実際には、どんな仕事や働き方をしているのでしょう? ここでは、産業保健師の仕事内容や、求められるものなどをご紹介します。
■産業保健師とは?
産業保健師は、おもに民間企業のなかにある医務室や保健室で働く保健師のこと。同じく企業で働く産業医や人事部門の社員らとの協力で、社員の健康維持に取り組んでいます。
保健師の資格を持っていれば、産業保健師になるために特別な資格は必要ありません 。ただし、日本産業衛生学会が設けている産業保健看護専門家制度のように、産業保健師の質の向上のために一定の規定を満たした産業保健師の登録制度を設けているところも。
登録条件としては、「産業保健師として2年以上の実務経験と、第一種衛生管理者の資格を有し、規定の産業看護師講座を受けた者」とされています。そして、登録後も5年毎の更新と、それに伴う単位取得が必要となります。
■産業保健師の仕事内容は? 働き方は?
産業保健師の主な仕事
・仕事中の体調不良やけがの処置や必要時の医療連携
・健康診断結果の把握や分析
・生活習慣予防など保健指導
・メンタルヘルス対策(毎年1回ストレスチェック実施)
・長時間労働対策
・休職者などのフォローやカウンセリング
・安全衛生委員会出席
・職場や施設視察に同行
働き方の特徴としては、保健師も他の社員と同じく企業の従業員となり、待遇や福利厚生も同じ条件で受けられる ということがあげられます。
さらに、一般財団法人日本公衆衛生協会が行った産業保健師の平成20年の実態調査によると、常勤で働く産業看護師は全体の97.3%。全体の78%が専門職として働き、保健師がひとりという企業が39.7%とのデータもあります。
ちなみに、保健師ひとりが担当する健康管理対象者の数は1,000〜1,999人で 、あることが36.2%。全体でみると、これくらいの人数を見ることが、ともっとも多くなっています。
■産業保健師に求められるものとは?
企業には、労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境をつくる義務が労働安全衛生法で定められています。そのため、労働者の健康診断の実施、メンタルヘルスやパワーハラスメントへの対応など働く従業員すべてに快適な職場環境を提供しなければなりません。
それらの義務を果たすことによって、企業の収益も上がり、社会貢献にも関与することができます。これらがスムーズに行えるように、産業保健師としての役割が達成できる人材が求められているといえます。
そして、産業 保健師がひとりという職場も多く、医療や看護の知識や経験だけでなく、仕事のマネジメント力や物事の判断力、従業員に対するカウンセリング能力も問われます。
昨今では企業において、経営的な視点で従業員などの健康管理を捉えて戦略的に実践しようとする「健康経営」が注目されています。
これに伴い、産業保健師もこれまでのような健康診断の把握や、病気やけがの対応だけなく、さらに広い視点で、健康経営の一端を担えるような幅広い知識や経験、能力が求められてきています。
■おわりに
産業保健師は、企業などの組織の一員として、従業員の心身の健康管理や職場の環境などを整え、企業収益に関わる重要な役割を担っています。注目されている「健康経営」に関しても、まさしく産業保健師が担う分野 。保健師との連携が取れれば、より良い経営環境を整えることができ、今後さらに産業保健師の重要性は高まっていくはずです。