担当の医師には聞きにくいことも看護師さんなら教えてくれるかもしれないと考える患者さんも多く、看護師は質問を受ける機会が多くあります。そこで問題になっているのが、本来なら医師に聞くべき医療従事者としての意見を、看護師が患者さんや友人から求められてしまうことです。看護師をしている人の中には聞かれたことがあるという方は少なくないでしょう。
そんな時、どのように対処すれば良いのか考えていきましょう。職場で意見を求められた時には、これから挙げることを患者さんと向き合う時や友人とのコミュニケーションの際のヒントにしてください。
☆患者さんから意見を求められたら
患者さんの中には、医師だけでなく看護師にあれこれ意見を求める人もいます。しかし医師に聞くようなこと、例えば治療方針などについて細かく聞かれたとしても看護師は答えることができません。それは、治療方針を細かく決めるのは医師だからです。
患者さんに治療方針への意見を求められたときは、治療方針を決めるのは医師であって自分ではないことをきちんと伝えましょう。どんな内容であれ、医師か看護師のどちらに聞いても良いと思っている患者さんもいるようですが、「看護師という立場からは申し上げられない」とはっきりと言うことが大切です。
「自分に聞かれたから、自分で何とかしないといけない」と思ってあやふやな回答をしてしまうと患者さんを不安にさせたり、混乱させたりすることにもなりかねません。回答できない旨を伝える際には、「担当の医師がいるときに一緒に聞いてご説明しますね」というような相手の不安を取り除く声かけをしておくとよいでしょう。また、自分がその場に同席できない場合には、同僚に内容を申し送りしておくことも大切です。
☆友人や周囲から意見を求められたら
ご自身の友人や周囲の方から体の症状について質問や意見を求められることは、看護師の方なら一度は経験しているでしょう。悪気なく質問をしてきた友人に対して、関係性を悪くしたくもないからと、回答に迷ってしまう方も多いはずです。友人の悩みの中には、「最近立ちくらみが多くて困っている」「疲れが全然とれない」「胃もたれがする」など様々でしょうが、看護師の経験から、ある程度の原因や対処法が思い付くものも多いとは思います。
しかし、友人に意見を求められた場合にも基本的には患者さんと向き合う際と同様の対応が必要です。「私は看護師だから診察はできない。不安があるのであれば、病院に行って医師に確認したほうが良い。」としっかり伝えてあげることが重要です。その場で、悩みや不安を解消することで相手に感謝してもらうことは、一見素晴らしいことのようですが、診察・診断ができるのは医師のみに認められた医療行為です。その判断に伝えた内容が適切では無かったり、その後も継続的に相談を受けるようになってしまったりする可能性もあります。
自分の身を守るためにも、周囲との関係性を維持するためにも、そのような状況は可能な限り回避するようにしてください。
☆「相談は聞くけど、診断はお医者様に聞いてみてね」とアドバイスを
ご自身でどんなに気を付けていたとしても、患者さんや周囲の理解が乏しい場合には、それでも意見を求められてしまうことはあるでしょう。
そんな時は、「かかりつけの医師に診断してもらうと良い」とアドバイスをしてあげましょう。ここでのポイントは「医師なら誰でも良いのではなく、実際に患者さんの治療に携わっている人に聞くべき」ということです。治療方針を決定するのは医師であることと、相手の症状や状態を一番詳しく把握し、さらに専門的な知識を持っている医師の意見を仰ぐのが最も良いときちんと伝えることで、納得を得られやすいはずです。
看護師の立場からは答えられないと言うと、では誰が答えてくれるのか?となってしまう方もいるかもしれませんが、そういう時には症状に対してではなく、その不安な気持ちを聞いてあげることで相手は多少なりとも安心できるはずです。